「あの子がいるから、学校に行きたくない」
そう聞いたとき、頭が真っ白になった方もいるのではないでしょうか。転校させれば楽になるのか、それとも「逃げ」を教えることになるのか。今の学校でもう少し頑張らせるべきなのか。答えの出ない問いを、一人で抱えていませんか。
この記事では、いじめによる不登校で「転校」や「環境を変える」ことをどう判断すればいいのか、法律上の位置づけや実際の手続き、判断の目安を整理してお伝えします。
いじめによる不登校は、法律上「重大事態」にあたることがある
「これくらいで学校に相談していいのだろうか」とためらう方もいるかもしれません。ですが、いじめ防止対策推進法という法律では、次のどちらかに当てはまる場合を「いじめ重大事態」として、学校や教育委員会に対応の義務を課しています(同法第28条第1項)。
- いじめによって、子どもの命や心身、財産に重大な被害が出ている疑いがあるとき
- いじめによって、子どもが長期間学校を休まざるを得なくなっている疑いがあるとき
つまり、いじめが原因で学校を休み続けている状態そのものが、すでにこの「重大事態」に当てはまり得るということです。「大げさかもしれない」と遠慮しなくても、学校側に本気で対応してもらう根拠は、もう十分にそろっています。
転校の前に、今の学校でできることもある
転校は簡単に決められることではありません。まずは、今の環境のままで子どもの安全を取り戻せないか、学校に求められる対応を知っておくと、判断の材料が増えます。
クラスを分けてもらう、別の教室で過ごす
いじめ防止対策推進法の第23条4項には、被害を受けた子どもが安心して過ごせるよう、学校がいじめている子を別の教室で学ばせるなどの対応を取れると定められています。毎日同じ教室で顔を合わせるのがつらいという場合、クラス分けを学校に求めることも一つの手です。
「出席停止」という手段もある
いじめが深刻で、他の子どもの学ぶ権利まで妨げていると判断されれば、教育委員会はいじめている子の保護者に対して「出席停止」を命じることができます(学校教育法第35条〔中学校では同法第49条により準用〕、いじめ防止対策推進法第26条)。これは相手を罰するための処分ではなく、被害を受けた子どもの安全を守るための対応です。実際に使われることは多くありませんが、法律に定められた手段である以上、学校や教育委員会に検討を求めていいものです。
こうした対応を求めても状況が変わらない、あるいは学校の動きに限界を感じたとき、転校という選択肢が現実味を帯びてきます。
転校を考えるタイミングの目安
「今がその時」を正確に言い当てる基準はありませんが、次のような状態が続いているなら、転校を具体的に考え始めていい合図だと思います。
- いじめが2週間以上続いていて、学校に相談しても改善しない
- 子どもが「もう学校に行きたくない」とはっきり口にしている
- 頭痛や腹痛、眠れない夜が続いている
- 学校に伝えても状況が変わらない、あるいは学校自体がうまく機能していないと感じる
これらは、子どもが出している精一杯のSOSです。「もう少し頑張れるはず」と現状維持を優先するより、子どもの安全と心の状態を一番に考えて判断してあげてください。
転校して環境を変えることで、変わること・変わらないこと
変わること
- いじめてくる相手と、物理的に距離を置ける
- いじめとは関係のない場所で、新しい人間関係を一から作れる
- 「もう我慢しなくていい」という安心感が、心と体を少しずつ緩めてくれる
変わらないこと・気をつけたいこと
- 転校すれば自動的にいじめが消えるわけではなく、新しい環境に慣れるまでの不安や、友人関係を一から築く負担は残る
- 休んでいた間の学習の遅れは、どこかで取り戻す必要がある
- 「転校=逃げ」という周りの目を、子ども自身が気にしてしまうこともある
転校すれば全部解決する、というわけではありません。転校後も含めて、子どもの気持ちに寄り添い続けることが大切です。
転校以外にも、「環境を変える」方法はある
環境を変えるといっても、必ずしも同じ制度の学校へ移ることだけが答えではありません。
学籍を置いたまま、フリースクールに通うという選択
公立中学校などに籍を置いたまま、フリースクールに通うことで「出席」として扱ってもらえる制度があります。学校に無理に戻るのではなく、一時的に距離を置く「避難」先としてフリースクールのような居場所を使いながら、学籍そのものは残しておくという選び方です。自分のペースで過ごせて、心の負担が少ない場所として選ばれることが多い方法です。ただし、フリースクール自体は正式な「学校」ではないため、出席として認めてもらうための手続きや、在籍している学校との連携方法については、事前に確認しておくと安心です。
高校生なら、学び方そのものを変える選択肢も
中学生の転校先は義務教育の枠内に限られますが、高校生であれば、全日制から通信制高校へ移るという選択肢もあります。「毎日同じ教室に通う」という前提そのものを手放し、自分のペースで学べる場所に移ることで、いじめのあった環境から距離を置きながら学びを続けられます。通信制高校について詳しく知りたい方は、他の記事もあわせてご覧ください。
まとめ
いじめが原因の不登校は、法律の上でも「重大事態」として扱われ得るほど、深刻な問題として位置づけられています。転校は大きな決断ですが、その前に学校側へクラス分けや出席停止を求める余地があることも知っておいて損はありません。それでも状況が変わらないなら、子どもの安全と心の状態を一番に置いて、転校やフリースクール、学び方を変えるという選択肢まで含めて考えていきましょう。
どうか一人で抱え込まないでください。学校や教育委員会はもちろん、必要であれば弁護士や専門機関に頼ることも、決して大げさなことではありません。

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